カサブタは創傷治癒の敵・・・

うちに転院してくる患者さんには、褥瘡(床ずれ)を持込される方が時々おられます。かつて研修医だったころ、こういう傷はイソジン塗りまくって、ゲンタシン軟膏塗って、ソフラチュール当てて、その上にガーゼ・・・なんてことをしていました。ちょっと深くなっていると、イソジンシュガー(ガラス瓶にグラニュー糖を入れてイソジンと混ぜて作っていた)とか、カデックス(ヨード剤が徐々に放出される)とかを詰め込むなんていうのがよく行われていた処置。まあ、もうそんな「野蛮」な処置を自分がすることは無くなったのですが、未だにこの時代から「進歩する」ことを拒否して鎖国しているかのような処置をしてやってくることがあったり。
今の創傷治療の主流は湿潤療法。創部を湿潤環境に保つことで治癒を促していくのですが、未だに看護師さんの中には
滲出液多量=悪、滲出液減少=善 だと思う人がいたり。そのため、創が乾燥した=治っただと信じているとしか思えない言葉が申し送りされたり。一番困るのが、きちんと上皮化して滲出液が出なくなった=創が治ったのと、処置が不適切で必要以上に乾燥して湿潤環境が維持できずに痂皮化してしまっただけが見分けがついていないこと。
痂皮で創が覆われている場合、大抵の場合その痂皮形成が創の上皮化を邪魔してしまいます。手術創がなかなかよくならないままで転院してくる患者さんの多くがこのパターン。治りきっていなくて傷が離開してしまったり・・・
なぜ創傷被覆材なんてものが使用されているのか、それを用いてどのように傷が治っていくのかを観察していればこういう痂皮化形成の問題は見えてくると思うのですが、昔々の看護の先輩から教わった「キズは乾燥した=良くなった」という原始時代のような申し送りが続けられるのは悲しい話です。

さらに問題なのは、死に絶えたはずの「床ずれにゲンタシン処置」している患者さんがいまだに転院してきたりすること。その辺りでは、未だに鎖国政策をとっておられるのだろうか・・・