リハ医療の今後のことをいろいろ考えた2日間(その1)

21日は回復期リハ病棟協会の診療報酬説明会
今回の診療報酬改定で、回復期リハ病棟の点数については全体として比較的平穏な改定であったと思います。回復期リハ病棟の数は順調に伸びており、病床数も68,000床を超えました。かつて全国で5万!!というのを目標にしていたように記憶していますが、それをはるかに越えて伸び続けています。
今回の診療報酬改定で、回復期にとって一番大きな問題は「入院料1」にのみ認められた体制強化加算。1日1患者あたり200点という大きな点数が付きます。50床の病棟では、これをとるかどうかで年間3000万以上の収入の差が出てくるほどの大きな数字のため、これをどうやって算定するかということが大きな注目点であったと思います。
現在、全国の1/3の病棟が入院料1を算定していますが、今回の改定でそれが半分以下に減るのではというのが、厚労省の予測のようです。しかし、会場の質問などを聞いていると、現在入院料2を算定している病棟が今回のこの高額な加算に魅せられてなのか入院料1へのアップを目指している気配が。これまでは、コストアップなどを考慮すると入院料2のほうが利益率は高いと言われていましたが、この体制強化加算が取れれば、一気にそれが逆転するのでは・・・ということでしょう。
いろんなところで、医療コンサルとかいう人たちが姑息的な方法でA項目1点をとる方法を講演しておられるという話を見聞きしています。前回改定では、血圧測定1日5回を入院患者全員に出すといったバカな方法が全国で蔓延してようです。回復期の全国調査でもA項目項目1点以上の患者のうち、血圧測定1日5回以上という項目での算定が全体の半数を超えているという信じられないようなデータが報告されていました。今回の改定で変更された「重症度、医療・看護必要度」では、この血圧測定の項目が削除されましたし、次に算定項目として多かった呼吸ケアのうち喀痰吸引のみの場合も項目から削除されました。
喀痰吸引を要する患者さんは重症度の高い患者さんが多く、この項目の削除はまったく納得がいきませんが、血圧測定については、その恣意的な運用がされているとしか考えられない結果からみて妥当といえるかもしれません。(A項目が回復期の患者さんの重症度を測定する上で有用であるかは別として)
今回の改定で「コンサル」さんたちが狙っている項目は「心電図モニター」。入院してきたら心電図モニターを全患者に付けましょう!!などと馬鹿げたことを言っているようです。彼等の辞書には「恥」という言葉は無いようです。24時間モニター装着してリハビリをしないとならないような症例が、回復期にどれだけいるのでしょう。
この項目が設けられた意味は、より早く、より重症な患者さんを受け入れる高機能な回復期を優遇しようということですから、そういった方向でのがんばりをしている(あるいは今後そういった取り組みをしていく)というのが入院料1でなければならないのですが、診療報酬改定のウラをかくような形での点数獲得は医師としてのプライドとかそういうものをかなぐり捨てているようで好みではありません。
今回の改定でリハ医療全体に大きな影響を与えそうなのが、「廃用症候群」の取り扱い。なんでもかんでも廃用症候群という病院があり、(スゴイところでは、指の骨折後の廃用症候群なんていうものまであるらしい。これで回復期に入院させ、廃用症候群の点数でリハを算定しているとしたら。。。)今回の適正化(診療報酬ダウンの厚労省用語)が行われました。点数ダウンについては、まあ妥当なところだろうと感じていましたが、想像を越えて厄介だと感じたのが、「他の疾患別リハが算定できる患者さんはその疾患別リハ料で算定しろ」という事。説明した石川さんの解説がそのままだとすると(そんなことになったらリハ難民が発生する危険性もあるけど)肺炎後の廃用症候群のひとは呼吸リハ、心臓術後の廃用症候群の人は心大血管リハを算定しろということのようです。呼吸リハはともかくとして、心大血管リハは「循環器科または心臓外科」の標榜のある病院でしか施設基準が取れませんから、回復期リハ病院で、心大血管リハの施設基準を持っている所は1割程。心臓の術後の患者さんが回復期に来る割合はごく低いですが、一体どうするの?と聞いてみたところ、「施設基準をとっていない病院はいっさいリハ料が算定できない」という衝撃的な話。心臓術後の患者さんのリハビリはどこが引き受けたら良いのでしょう。