看護必要度の大幅見直し

H26診療報酬改定の一番のターゲットは急性期病棟。今回の急性期病床には看護人員配置の他に、平均在院日数の縛りと重症患者受け入れ比率の縛りが存在します。今回の改定ではこの2つの基準を変更するわけですが、従来の単に日数を短くするとかではなく、これまで使っていたメジャーを取っ替えてしまうような方法であるところが目新しい部分と言えます。
平均在院日数計算については、従来は除外してよかった長期入院患者(特定除外患者)を計算に繰り入れ、さらに短縮する上で重要な役割を果たしていた短期の検査入院や簡単な手術の入院患者を対象外にするということが先週の中医協で話し合われていました。
今週は後半の重症患者受け入れに関する基準の変更についての論議です。
本来は、看護師の配置を決定するツールとして開発された経緯のある「看護必要度」を重症患者の定義として使用するという部分にかなりのムリがあるというふうに感じますが、走りだした列車はそう簡単に止まれないんだろうなあ・・・と思ってみておりました。とうとうその列車の走る線路を付け替えるような感じの改定です。そもそもの使用意図が異なっているのだから上手く行かなかったのはこの指標を選んだヤツのせいともいえます。しかし「間違ったことをした」とは言えない立場なのか、看護必要度の基準のほうをいじるという方法を選んだということでしょう。

今回の見直しでの変更点としては、項目から外すものとして・・・
1.褥瘡処置
2.痰の吸引
3.血圧測定5回以上
4.時間尿測定
追加されるのは特別な医療処置の項目として
1.抗癌剤の内服
2.麻薬の内服、貼付
3.抗血栓塞栓薬の持続点滴
ということになりそうです。
当初追加項目として上がっていた、
計画に基づいた10分間以上の指導・意思決定支援は今回の項目追加が見送られました。恣意的な運用がなされやすい項目なので(看護師が10分間話を聞いたらOKとか解釈する人が絶対出てきそう)、まあ順当かと思います。

問題は、この新たなA項目が回復期リハ1の基準として生き残るかどうか。残ったA項目は、
喀痰吸引以外の呼吸ケア
点滴ライン同時3本
心電図モニター
シリンジポンプの使用
輸血や血液製剤の使用
専門的な治療・処置として、
1抗悪性腫瘍剤の使用
2抗悪性腫瘍剤の内服
3麻薬注射薬の使用
4麻薬内服・貼付・坐剤の使用
5放射線治療
6免疫抑制剤の使用
7昇圧剤(注射)の使用
8抗不整脈剤の使用
9抗血栓塞栓薬の持続点滴
10ドレナージの管理

となります。はっきり言って、点滴ラインが3本以上入っている人やシリンジポンプ使わないといけないような人が回復期リハで3時間のリハビリができるとは到底思えません。転院当日に輸血したり、血液製剤を使わないといけない人や昇圧剤の注射をするような人は回復期というよりもまだ急性期治療が終わっていないでしょう。放射線治療も回復期では包括点数内ですし、放射線治療の機械を所有している回復期病院が果たしてあるのか。。。というような類。
この2年間でこの新しい基準のA項目で受け入れたことがあるのは、
呼吸ケア 在宅酸素療法しておられた人など
抗悪性腫瘍薬の内服
麻薬の内服、貼付
免疫抑制剤の使用
くらいではないかと記憶しています。後は術後の創が離開していた人が当てはまるか。。。

急性期病院で行われたシミュレーションでも、常時15%以上を満たしたのは56%ほどだったという結果が今回の資料の中にあります。4割以上の病院にとって厳しい基準ということになります。これは嵐が吹き荒れますね。
ちなみに今回の新しい看護必要度は「重症度、医療・看護必要度(仮称)」という名前のようです。「医療」という言葉が追加されました。