中医協の「入院医療等の調査・評価分科会」資料なんてものを見ながら・・・

 2年に1度の診療報酬改定ですが、来春はまたその改定が回ってきます。いわゆる2025年問題へ向けて、厚労省の皆様は、医療の機能分化を中心とした医療体制整備へ向け、この診療報酬改定による経済的な誘導をかけて行かれます。その道筋がどこを向いているのかを考えたりするには、中医協でどんなことが論議されているのかを眺めることの有効性はこの十数年の経験から明らかです。診療報酬改定が3月に発表されてから慌てて対応するというノンキな体制では、対応が終わった頃には次の改定がやってきてしまいますから。
 H24年4月の診療報酬改定は2025年へ向けた医療供給体制変化の第1歩という位置付けで、急性期病床として扱われる一般病棟の中にふくまれる「療養病床」的な部分にたいして大きな変化がありました。それに関連した調査・評価が実施され、その速報値というのが中医協の「入院医療等の調査・評価分科会」で公開されていました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000320du.html
この調査のいけていないところはいくつもありますが、まず一番の問題は、その調査の回収率の低さ。わずか10%ほどの病院しか回答していません。最初から全数調査でない上に、調査依頼されたうちの1割しか答えていないものを用いた調査資料というのがどれくらい全体を反映できるのか、統計分析のプロフェッショナルの人に教えて欲しいなあ・・・なんてことを思いつつ資料を読み進めていきます。
前半の平均在院日数に関する分析のほうは分析のための分析としか言い様がないので、さらっと流し、今回の改定で一番インパクトのあった慢性期部分への切り込みに関する資料を眺めていくといくつか興味深い部分が見えてきます。
一番注目していく必要があるのは「特定除外患者」関連。90日以上の入院をしている患者さんのうち、一定の基準を満たした「除外」患者さんのことで、この「長期入院患者」が平均在院日数計算の対象外となっているおかげで、平均在院日数が短縮できている病院は無茶苦茶多いだろうと思っていましたが、これまで7:1や10:1の病院でこの特定除外患者がどれくらいいるのかというデータは見たことがありませんでした。
 資料を見ると、7:1で3%ほど、10:1では6%強がこの90日超の患者さんで占められています。15%とか20%とかの13:1や15:1よりも低いのは間違いありませんが、正直言ってこの平均値で見ることにはなんの意味もありません。
バリバリの急性期医療専門の病棟から「なんちゃって急性期」までを全部まぜこぜにしているからです。資料の62ページ目に各病院ごとの特定除外患者比率のグラフが出ています。
このグラフで平均値などを見ているのは全くのナンセンスであることが見えてきます。7割から8割の患者が90日以内であるのに対して、10:1で15%、7:1でも7.5%の病院が90日超え患者が2割以上入院しており、10:1で2.8%、7:1でも1.6%の病院で入院患者の半数以上が90日超の患者であるという「いったいどこが急性期病院やー!!」と言いたくなるような状況。極少数ではあるものの、入院患者の9割以上が90日超という想像を超えるレベルの病院まで存在しています。
7:1の基準には平均在院日数18日以下ですが、この90日以上の患者が「特定除外」であれば、平均在院日数計算の対象外になるので、その残った部分の患者の平均在院日数で18日以下をクリアすレヴェ良いということで、こういった馬鹿げた数字が可能となっています。これらの病院が「自分たちは急性期病院だ!!」とどんなに主張したとしてもこれらの病院は実態として急性期とは到底言えないレベルの医療を提供している病院です。
資料の72ページ目、「論点」として挙げられている「一般病棟7対1・10対1入院基本料算定病棟における特定除外制度についてど のように考えるか。」という一文。日本でもっとも大きなベッド数なのはこの7:1だったりすることを考えれば、影響を受ける病院数が仮に1割とか2割であったとしてもそれが医療に及ぼす影響はさらに大きなものとなりそうです。