一般名処方のリスク

今回の診療報酬改定でのジェネリック処方推進の「切り札」として出てきたのが、この「一般名処方」。欧米ではすでに最初から一般名で処方されるようになっているので、これと同等のことを日本でも行えば、ジェネリックの使用が増えるということを国として期待しているのでしょう。
今回の話の流れを見ていると電子カルテによる処方を念頭においての論議が主体です。例えば医師が「ガスター」を処方しようと電子カルテで「ガスター」を処方すると印刷された院外処方箋には「ファモチジン」という一般名が印刷されてくるというような感じ。医師の負担を増やさずにできるようにITを活用ということになっています。しかしこの方法で一番コワイのは、薬のリストから処方するときに薬を選び間違えた時に処方箋を見ても「自分が選ぼうとした薬」なのかどうか分からないリスクがあります。
自分の使い慣れているクスリでなければ一般名を言われてもそれがいったい何のクスリか瞬時にわかる人はそうはいません。処方箋を患者さんに渡す前には、クスリを間違えていないか、処方忘れがないか、日数間違いしていないか、などを確認するのですが(モニター上で発見できない間違いも処方箋になると見つかったりするのはよくある話)、院外処方箋に印字された「一般名」が自分処方したクスリかどうか、ぱっと見てわかる自信はまったく無い・・・

さらに厄介な問題を見つけました。高血圧症の薬「アダラートCR」。これの一般名は「ニフェジピン徐放錠」。ちなみに「アダラートL」の一般名も「ニフェジピン徐放錠」だったりします。この2つは高血圧を治療する成分としては「ニフェジピン」で、そのクスリが徐々に放出されることで長時間効果を持続させるようにするところまでは同じですが、その徐放方法が異なり、Lが1日2回の服用が必要(半日で効果が切れる)のに対し、CRは1日1回の服用で良いという歴然とした差があります。(昔からある「L」を改良したのが「CR」なので当然といえば当然ですが・・・)
医者として「1日1回、アダラートCR(20)1錠服用させよう!!」と思っても、一般名としてまったく同じ「アダラートL(20)」のジェネリックを処方されてしまう可能性が出てきます。似た名称のクスリによるトラブルが世の中では山のように起こり(血圧のクスリと糖尿病のクスリを間違えたとか・・・)、クスリの名称間違いは大きな医療事故に繋がりかねないリスクをはらんでいます。

こういったこれまで一般名処方を推進するようになっていないこの国で拙速に導入しようとしているところに危機感を覚えています。