中医協の資料を読みながら・・・その2

その2は、僕のホームグラウンドともいえるリハビリテーション関連。
今回もリハビリテーションは、重要項目の一つとして取り上げられていますし、これまでも毎回の診療報酬改定のたびに変更が加えられ続けてきました。
今回の変更点として予想されるのは、
1.急性期リハ加算の2段階制
2.外来リハビリテーションの診察を省略可能
3.回復期リハの上位基準の新設
4.維持期の脳血管、運動器リハの介護保険への誘導
5.亜急性期の診療報酬削減
など。
この他に
6.訪問リハの医療保険での利用の拡大
7.廃用症候群リハ、がんリハの取り扱い
あたりがどうなるか、というところではないかと

1.急性期リハ加算については、リハ関連5団体の要望でも挙げられていた項目。団体側の2段階の要望は、リハ専門医などの要件を追加する上位基準の新設でしたが、中医協の資料では最初の2週間とそれ以後という期間による2段階制となっていました。急性期のリハビリテーションは圧倒的に不足しているのは間違い有りません。そこにどれだけの急性期病院が頑張ってもらえるのか・・・そこはまだ不明ですが。


2.維持期リハビリの介護保険への移行を強力に推進しようとしている中ですが、外来リハビリテーション時の毎回診察の義務が外されるというもの。逆に毎回診察で細かく再診料を稼ぎたい・・・という人にとっては「マイナス改定」ととる方もおられるようです。医師が毎回診察が必要と判断すれば、毎回診察で再診料請求は可能というような形のようですが、いわゆるDoでリハビリテーション内容をまったく変更しないようなことをしていれば、早晩なんらかの制限追加が確実ではないかと推察。

3.毎回毎回変化していく回復期リハの基準。今回は現在の「回復期1」の上にさらに上位基準ができるようです。中医協の中ではほとんど論議(委員からの反論とか)もなく、通過していった形との話も伝わってきていますし、できることはほぼ確実。
1)スタッフ配置の充実 専従医師、看護13:1、介護20:1、PT3, OT2, ST1, MSW1
2)重症患者の受け入れ これまでの日常生活自立度10点以上20%からの引き上げ、医療依存度の高い患者の引受けに関する条件の追加(看護必要度A項目?、その他の指標の新設?)
3)在宅復帰率も現在の60%より高い基準となる
この新しい上位基準をクリアできる病院は50位ではないか、という予測の記事も有りましたから、基準はかなり厳しいものになる可能性は十分にあります。

4.医療保険で維持期リハビリをみるのは次回改定までと厚労省の課長さんが言ったとの報道もあります。前回の介護保険改定から始まった1-2時間型通所リハへの本格的な誘導が同時改定という今回のチャンスを活かして行われるということです。脳血管と運動器の疾患別リハビリを「維持期にふさわしい評価とする」=「維持期のリハは引下げ」ということ。すでにリハビリを行なっている医療機関は全て介護保険でのリハビリが可能になる制度にはなっていますので、この「引き締め」政策で介護への移行が進むか否か。各医療機関の対応は要注目と思っています。(いろんな医療機関のリハ関連職種とお話ししても、病院で介護保険のリハが提供できるということを知らない人のなんと多いこと)下手すると経営的にマイナスになるということで、一気に外来リハを打ち切るという判断をする医療機関が続出すればまた「リハビリ難民問題」が起こるリスクはあるかも。。。

5.厚労省がなんらかの病院調査を行い、それを中医協の資料として出してくるときには何らかの意図があるのが通例。今年は回復期リハ病棟と亜急性期病床に対して、ほぼ同一内容を回答させるようなアンケートが実施され、「回復期に比べて亜急性期は軽症例を診ているのに診療点数が高い」という形でデータがまとめられました。今年最後の中医協の支払側意見書の中にまでわざわざ「亜急性期の引下げ」が文章として記載されましたのでまずこれは確実。引下げ方法として、疾患による分類を行なってくるか否かが僕の中での興味です。亜急性全体を下げるのか、亜急性期入院患者の中心となっている運動器疾患のみを下げ、脳血管疾患などと差をつけるのかというところなのですが、回復期リハと異なり、亜急性期病床には疾患の縛りがないので、この分類に当てはまらないような症例も入院してきます。果たしてこういった事例にうまく対応できるような点数付けとなるや否や・・・

6.退院直後や、急性増悪した在宅患者などに対して機動的に提供できる体制としたい、というのは訪問リハビリを提供している人間ならいつも思うことです。介護保険はこういったスピード感には乏しい制度設計になっているので、この部分を医療保険で提供できるようなシステムが「使いやすい形で」導入されると良いのですが。。。

7.前回の診療報酬改定で脳血管リハから「分離」された形の廃用症候群に対するリハビリテーション。レセプトの電算化も進み、どういった医療機関がどういった症例に対してこの「廃用」という名目でのリハビリテーションを提供しているのかというデータを着々と集積しているわけです。そういう観点から見ると、この「廃用症候群」は厚労省がターゲットとしている分野とみて間違いないわけで、今回そこに対してメスが入ると予想していたのですが、今回の診療報酬改定論議の中でこれに関わる項目は論議対象となりませんでした。前回改定で診察されたがんリハも同様。これらはもう2年間熟成されていくのかもしれません。特にがんリハについては、算定している医療機関の多くはDPC病院であると予想されますし、そうなればどういった疾患に対してどれだけの期間、どれだけのリハビリが提供されているのかといったことがDPCのデータ解析から導きだされてくると予想されますから、こういったデータを使用した解析が行われていくでしょう。

2025年へ向けたロードマップを見ると急性期後を担う亜急性期は現在よりも拡大していく必要性が示されています。これはこの分野の医療機関を「増やしていく」といういうよりは一般病床からの乗り換え組を想定しているハズ。このフィールドへの誘導方法として、「こちらの水を甘くする」のか「あちらの水を苦くする」のかがありますが、現在の診療報酬改定の状況からして、「甘く」なる余地はあまりありませんから、平均在院日数の縛りを厳しくしていく、重症度の基準を厳しくしていく、などの方法で「急性期」のフィールドからの退場を促していくのでしょう。

というあたりで終了。