中医協の資料を読みながら

Facebookで友人が「解説を・・・」なんてコメントをくれたので、当直でヒマなのを良い事に、今回の改定関連で思いつくことを。今日は中医協でもDPCがメインだったので、急性期を中心に。

今回は診療報酬、介護報酬の同時改定であったこともあるのでしょうが、いろんな意味で注目すべき改定となっていると思います。今回特に印象に残るのは、今回改定に関すること以外(将来の改定へ向けた意見)が数多く表に出てきていることです。
一つには、これまで「一般病床」≒急性期病床という扱いであったところから、現実の中身について評価して、「急性期病床群」というものが社保審の議題として取り上げられたことが挙げられます。
現在、DPCは診療報酬によるインセンティブの効果もあり、一般病床の過半数がDPC対象の病床となっています。かつて一番DPC化が遅れている地域の一つ(大学病院と県立中央病院のみだった)島根県でも、200床以上の一般病床を有しているにもかかわらず、DPCとなっていないのは2,3施設のみとなるところまでやってきていますし、都会ではいわゆるケアミックスと言われる療養病床との併設となっているような医療機関もDPC病院となっています。
このDPC、これらの医療機関にどういった疾患で患者さんが入院し、どれだけの医療資源が投入されているかを完全に国が把握していくシステムです。過半数の病床のすべてのデータを入手しているということは、その医療の中身を解析することが簡単にできるということ。今年の中医協の資料として今年出てきた中でも入院は金曜日、退院は月曜日に多いというデータ。要するに「週末にベッドが空床となると収益が落ちるので・・・というようなベッドコントロールをしている病院がありますよ」というもの。これまでの紙のレセプトで請求がなされている限り余程の人海戦術を取らなければ出て来なかったようなデータが簡単に出せるのです。我々リハビリテーション分野についても「急性期でリハビリテーションを受けて退院する脳血管障害患者は半分しかいない」なんていうデータもこのデータベースの解析で導きだされています。
一般の人間でもhttp://hospia.jp/というHPを見れば、全国のDPCは病院の様子をいろいろ垣間見ることができます。各種疾患別の病院ごとの患者数やその平均在院日数、複雑系数(どのくらいややこしい患者さんをみているか)、効率係数(同じ患者であればどれくらい短期間で退院できているか)なども一目瞭然。各医療圏ごとに絞って観察していけば、その地域でその病院の果たしている役割(どういった疾患に強いか)が見えてくるといえます。(シェアなんていうものも出せたり・・・)各DPC病院ではこういった内容をもっと詳しく分析できるようになっているとか。厚労省はさらにもっと詳しく分析してくるでしょう。
これまで何らかの医療経営情報を調査しようとするとほとんどがアンケート(今でもそうですが。。。)。きちんと回答しない施設があったり、そもそも答えている内容そのものの信ぴょう性についてまったく保証されていなかったりしますが、このシステムの導入で、自分たちの望む切り口のデータをすっと取り出しやすくなってきたのは間違いないでしょう。
今回、DPCは部会は、大学病院などに外来患者のデータも全部出せ(外来患者数だけでなく、中の医療の中身(薬だけもらいに大学病院に来ているなんていう患者がどれだけいるか)まで調べようとしている)と言い出しましたし、出来高払いを選択している医療機関についてもDPCに基づくデータの提出を求めてきています。
最初は前年の診療報酬を保証するためにあった係数も、その病院がどういった医療を実際に行なっているかで加点する方式へと移行してきつつあります(救急医療しているか、地域連携しているか、がん登録、t-PAとかDMATとかそういうことまで細かく)。
さらに中医協や社保審に出された資料を見ると今後厚労省が見込んでいる「急性期病床」の数は現在の一般病床数の半分ほどです。金銭的なインセンティブやペナルティ(意図する患者層を診療していると経営が立ち行かなくなる)を用いて自分たちの求める数字までふるい落としにかかってくる第一弾が見えてきたとも言えます。
今回の改定でも13:1や15:1については、90日超入院患者さんについて、療養病床と同じ診療報酬とするか、平均在院日数カウント対象とするか、という選択をすることが求められそうです。13:1,15:1でこういった長期入院が主体となっている病院は急性期からの退場が宣告されるという解釈でよさそうです。
今回、7:1、10:1については、この90日超についての厳しい基準は導入されないようです。しかし、厚労省の想定している急性期病床数を現時点ですでにこの二つの基準の病床数が上回っていることを考慮すると早晩、この同じ扱いがこれらの看護基準の病床についても行われることは覚悟しておくべきかもしれません。今回の改定で7:1,10:1をクリアするための基準が厳しくなると言われています。7:1で言えば、現在19日以下とされている平均在院日数を18日以下へと短縮していくことと、重症度比率アップはほぼ確実な情勢でしょう。そして今後さらに短縮化は進み、重症比率も挙げられていくことは必須。

これからも急性期として生き残るという決意があるのであれば、これらを念頭においておくことは必要なのではないかとおもいます。

久しぶりの長文だ・・・