視察4日目その2 MetroHealth Burn Unit


 つづいて向かったのは別のキャンパス。ここはいわゆる急性期の総合病院です。

熱傷治療専門のユニット。熱傷専門ICU、熱傷専門病棟、熱傷専門外来から成り立っています。アメリカでは熱傷の救急患者はその地域の熱傷専門ユニットでの治療が義務づけられているとのこと。たとえば全身熱傷の患者は、地元の外傷センターでルート確保、挿管などをされ、ヘリコプターで熱傷専門治療病棟に送られてくるということでした。この病院は人口220万のエリアをカバーしているとのことです。

外来のなかにはお化粧専門の部屋があります。瘢痕などをきれいに隠すためのいろんなテクニックなども専門のメイクの人がいろいろ教えてくださるのだそうです。こういうことも含めて熱傷専門ユニットということ。

熱傷専門ICU。全部で5室あるそうです。熱傷の入院期間は熱傷エリア1%につき1日程度かかるのが標準。重症例が多く、この時点で入院していた患者さんは4月に受傷されて入院された方。昨日ようやくレスピレーターから離脱されたばかり。まだまだ治療はかかるでしょう。他のアメリカの急性期病棟が平均入院期間が心筋梗塞で3日、脳梗塞で3から5日とかのなか、この熱傷ユニットは3ヶ月とか、桁違いの入院期間となっています。

熱傷患者の救急処置室。ヘリポートからダイレクトでここに入ってこられるようになっている(と言っているように聞こえた)。全身の洗浄ができるシャワーが治療台の上にぶら下がっています。左上にみえるのは酸素などの供給ユニット。気道熱傷などで挿管されて送られてくるひとも多いそうです。奥におられる無茶苦茶怖そうな人がこの熱傷ユニットのボス、Dr.Yowlerさん。もとアーミーの軍医だったという迫力満点のDrです。

ICUから出てきた患者が移動する一般病棟。一般病棟のベッドにも全てモニターなどの治療に必要な機器があらかじめ納められているのは大規模災害などの場合には全部をICU体制で使用できるようにするためだそうです。

 このような熱傷治療に特化した病棟をあらかじめ用意しておくということはいざというときにかなり重要な事なのは間違いありませんが、その設備投資や人的配置のコストは莫大な筈。他の病棟と比べて非常に長い治療期間も含め、そう言うところは大丈夫なの?みたいなことを質問したヤツがいたのですが(当然、そんな馬鹿なことをするのは僕)、とたんにこの鬼のようなDr.Yowler、凄く不機嫌になりました。予想通り、このバーンユニットは大赤字。特にICU部分はまったくお金を浪費し続けており(みたいな言い方)、外来部門などの収益でユニットは収益を上げられるそうですが。アメリカの医療費は病院に支払う医療費と医師(たいていは独立している)に払う費用は別なのですが、政府が自分に支払う額が少なすぎる!!みたいな切れ方をされてしまいました。そんなの他で言ってよ・・・日本から来た俺らに言ったってしょうがないでしょ・・・彼曰く、「だからクリーブランドクリニックにはバーンケアユニットが無いんだ」。周りの病院にクリーブランドクリニックにはあまり好かれていないようです。(どこにいってもこういう皮肉っぽい言い方をされます。)