視察4日目その1Senior Health and Wellness Center

 毎日、例のトラックのような乗り心地のミニバンで1時間近くも揺られて視察先に走っていましたが、今日はすぐ近く。MetroHealthのSenior Health and Wellness Centerへ。ここは元々あった病院が倒産した建物を改装して、デイケア、外来のクリニック、スキルドナーシングホーム(イメージとしては日本の老健施設に近い感じか?)、ホスピスが作られています。一番気に入ったのは、資料にあったキャッチフレーズ「Saving lives is only the biginning」というもの。これは免疫血液内科をしていた頃の「生き残るのが50%、お亡くなりになるのが50%」という世界からリハビリやに変わった8年前の僕の思いを端的に表している気がしました。救命のみが医療ではなく、そこからどう暮らすのかがやはり重要であるということでしょう。

煉瓦造りの古い建物。築40年を越える古い病院だった建物。

中はキレイに改装されています。

ホスピスの入り口にはブランケットをイメージ(暖かく包み込むイメージでこのホスピスを象徴している)したオブジェが飾られています。
このホスピス認可申請中と言うことでまだ誰もはいっておられませんでしたので、思う存分見せて貰いました。

この建物はデイケアを運営しているところとMetroグループという病院と訪問看護協会(協会とはいっても日本の看護協会とはちがうニュアンス。訪問看護、リハスタッフなどを派遣する一つの施設運営団体)のホスピスが同居しています。(これはアメリカでもかなりユニークな取り組みだそうです。)

ホスピスの廊下。落ち着いた色調のゆったりとした作りです。

部屋は一人当たり12畳くらいはありそう。ゆったりとした部屋にリクライニング機能付きの椅子とギャッジアップ可能なベッドが。部屋には液晶テレビとDVDがついています。ちょっとしたホテルのような環境。

建物の一角には小鳥が飼われています。なにか宗教的な意味もあるのかな?

そしてその横には暖炉が。この暑い中、建物内はしっかり冷房されていますが、この暖炉からは熱気が・・・ちゃんと炎が燃えているように見えています。いわゆる癒しの空間にこの暖炉は欠かせないと言うことでしょうか。

二つの古い建物の間にあった中庭部分の上に屋根をかけ、屋内庭園のようなかたちになっています。冬はとても寒くなるのでここで身体を動かしたり、チャリティーでバザーが開かれたり、いろいろに利用されているそうです。

スキルドナーシングホームの廊下。先ほどのホスピスよりも明るい雰囲気です。

部屋の面積は日本の施設より全体にゆったりしています。なかの介護用品とかはそんなにかわらないというか、あんがい質素(建物の他の部分の金のかかり方に比較して)です。

窓の外には家庭菜園みたいなものが・・・この建物の隣にある老人アパート(同一経営かは不明)の入居者に無料で貸し出されているとのこと。この菜園の種はクリーブランド大学から寄付されているそう。

この建物も多くの寄付によって成り立っていることの一端をしめすもの。こういった寄付が建設、運営を支えているとのこと。

病院が運営している外来部門。デイケア利用者やスキルドナーシングホーム利用者などが必要に応じて利用できます。各種専門医が交代でやってきて外来を行っています。「ワンストップショッピング」みたいな形でいろんなサービスが一カ所で受けられるというのがこの施設の「売り」


スキルドナーシングホームのリハビリ施設へ。アメリカはどこの施設に行っても歩行器はこのタイプ前が車輪で後ろはゴム足。

そのゴム足部分に硬式テニスボールに切れ目を入れて突っ込むというのが、「ほどよい滑り具合と止まり具合を両立させられて良いですよー!!」と一緒に参加した片岡さんに教えて貰いました。日本のフローリングや畳の上でも使いやすいとのことです。

お風呂のシャワーチェアがデカイ!!座面の横幅80cm以上ありました。
600ポンド以上の体重の人もいるので・・・と言っておられました。トランスファーベルトを腰に巻いているひとが目立ちましたが、あれがないとする側もされる側も危険なんでしょうねえ・・・

便座補高用のもの。あのでかいお尻に比べて便座は小さいんですよね・・・

ランチ。

この施設のチェアマンのCampbell先生。ほとんどサンタクロースのような雰囲気。

このスキルドナーシングホームのPTさんは日本人でした。大阪出身で説明してくださる日本語は関西なまり。こちらでPTライセンスをとって働いておられました。かなり本音でいろんなことを話してもらいました。
どれだけの期間、このスキルドナーシングホームに入所できるかというのもその人が加入している保険次第。保険会社によっては、毎週ADLや歩行距離などの状況を報告して行く必要があるということで、そのレポートの評価項目も保険会社ごとに異なるそうですが、この評価のなかで一番重視されるのが歩行距離というのが面白かったです。誰かのアシスト無しで何メートル歩行可能かというのが一番重要視されているポイントだそうです。
 このスキルドナーシングホームに入所されると、まずリハスタッフが現在の評価をして、どれだけのリハビリを行ってどれくらいのレベルをゴールとするのかを決定して医師に提出し、それにOKのサインを貰う、というシステムだということ。医師のリハオーダーではなく、セラピストがゴール設定もリハビリプログラムも両方決めるというのが興味深かったです。
 このスキルドナーシングホームはメディケアという政府管掌の高齢者向け医療保険の利用者が大半であり、このため大統領選挙の行方が今後の運営に大きな影響を与える可能性があるとのこと。実際、クリントン(夫)時代の政策変更で多くのPT,OTが職を失い、養成校がたくさん潰れてしまったそうですが、そのつけが今やってきてPT,OT不足が深刻になっており、PT,OTは奪い合い状態。この施設でもPT,OTが止めて足りなくなっており、派遣会社から紹介して貰っているということでした。
 この施設の改築には3000万ドルが必要だったということで、この資金は政府からの援助(例えばこの施設のデイケアサービス利用者は年間平均の入院日数がそうでない人々に比べて大幅に短縮されており、それによって医療費の増加を防ぐことができ、州政府など医療費を払う側にもメリットがあることなど、ロビー活動を通じて説得していくのだと。政府関連助成金対応専門のかたと各種企業、財団、個人からの寄付を受けることを専門にしている人のふたりがおられ、これらの運営資金を集めているそうです。他にも同様のプロジェクトを運営し、助成金や寄付を募っている「ライバル」は多く、寄付を集めることは、案外大変そうです。