「日常生活機能指標」は本当に日常生活機能の指標なの?

 今回、多くの非難を浴びつつ、(賛成する人なんてどれだけいるんでしょう?)導入される回復期リハビリテーション病棟の成果主義、その「成果」として在宅復帰率と重症患者の受け入れとこの重症者の改善というものが設定されました。これまで「日常生活機能指標」などというADL評価指標として見たことも聞いたこともないものが突然(日経ヘルスケアの記事でこの項目を使うかも?という記事を初めて読んだときは「そんな馬鹿な」と思いました。)現れたわけですが、先日から始まったこの評価の研修会を受けて帰った看護師さんの話を聞くとさらにこれを日常生活機能の評価に使うことのばからしさというか、ナンセンスさというか、そういうものに愕然としています。
 回復期リハビリテーション病棟は「在宅生活」を目指すための病棟です。そしてこれまで7年間回復期ばっかりやってきての実感の一つとして家に帰れるかどうかの大きなポイントは「排泄動作の自立度」です。これはおそらくどんな病院の方でもそう思われるはず。しかしこの「日常生活機能指標」なる評価にはこの「排泄関連」の項目がまったく含まれていません。さらに「できる」「できない」の2つに一つを選ぶ項目が目立ちますが、患者さんは急に「0点」から「100点満点」になるひとなんかいません。その途中、「全介助」から「見守る」だけでできるようになれば、これは大進歩の筈なのにこの基準ではすべて「できない」になります。さらにヒドイのは「患者さんの家族が全て介助して看護師が行わなかった場合」には。「できる」と判定するのです。そもそもこれは「看護必要度」という看護師さんの業務量を評価するために作られたものなので、その目的のためには「家族が行った場合には「できる」」でいいかもしれませんが、卑しくも在宅での生活を成り立たせるために「日常生活動作能力」の改善を図るべき回復期リハビリテーション病棟の評価法に「家族が全部手伝えばOK」みたいな基準を導入する人たちの気が知れません。
 さらには、この患者さんの重症度をたんにこれらの項目を0点、1点、2点として単純に足しています。これらはすべて順序尺度ですから、この順序尺度によって出された点を合計するというホントに君は小学校から算数とか習ってきたの?みたいなものが平気ででてくるところが恐ろしいです。JCSコーマスケールの100と300では3倍悪いというひとはいないし、ブルンストロームステージの上肢と手指と下肢を足して麻痺の重症度スコアにしたりする馬鹿はいないはず。(あ、褥瘡のDESIGNスコアを足すという暴挙にでている学会があった・・・これも看護関連だなあ・・・)