中医協で個別改定項目が明らかに その3(急性期)

今回の改定の一番大きな柱は増えすぎた(と厚労省が主張している)7:1看護体制の病院の削減と言えます。平均在院日数18日以下という基準に変更はありませんが、その算定方法そのものが変更になるというかつてノルディック複合で日本が圧勝したら翌年からルールが変更になったのを彷彿とさせるような感じです。
これまで、日本の急性期病院の平均在院日数算定にはいろんなカラクリがあって、長期入院の患者さんが算定から除外されることで、実際の平均入院期間よりも短い平均在院日数となっていましたが、今回この「特定除外」が認められなくなるということで、病院によっては基準を満たせなくなる可能性が出てきました。
さらに、
短期滞在手術等基本料3のみを算定した患者については、平均在院日 数の計算対象から除く。なお、○日以降も入院している場合については 入院日から起算して平均在院日数の計算対象に含める。
短期滞在手術料算定する患者さんは、平均在院日数短縮に大きく貢献している層ですから、これらの症例が多い病院には、これも影響を与えるのは間違いありません。リストにあがっていたのは以下のとおり。

K633 ヘルニア手術5鼠径ヘルニア、
K634 腹腔鏡下鼠径 ヘルニア手術、
K008 腋臭症手術2皮膚有毛部切除術、
K 093-2 関節鏡下手根管開放手 術、
K196-2 胸腔鏡下交感神経 節切除術(両側)、
K282 水晶体再建術1眼内レンズを挿入する場 合ロその他のもの、
K282 水晶体再建術2眼内レンズを挿入しない 場合、
K474 乳腺腫瘍摘出術1長 径5cm未満、
K617 下肢静脈瘤手術 1抜去切除術、
K617 下肢静脈瘤手術 2硬化療法、
K617 下肢静脈瘤手術 3高位結紮術、
K721 内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除 術1長径2cm未満、
K721 内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術2長 径2cm以上、
K743 痔核手術2硬化 療法(四段階注射法)、
K867 子宮頚部(腟部)切除術、
K873 子宮鏡下子宮筋腫摘出術、
D237 終夜 睡眠ポリグラフィー1携帯用装置 を使用した場合、
D237 終夜睡眠 ポリグラフィー2多点感圧センサ ーを有する睡眠評価装置を使用し た場合、
D237 終夜睡眠ポリグラ フィー31及び2以外の場合、
D 291-2 小児食物アレルギー負荷 検査、
D413 前立腺針生検法

これらがどれくらいのものかはわかりませんが、決して小さくない影響があるはず。
この2つの合わせ技に加えて、看護必要度の見直しも7:1病院にとっては、大きなものになりそうです。
これまでの「重症度・看護必要度」という名称が「重症度、医療・看護必要度」という名称に変更となり、項目からは、喀痰吸引、血圧測定5回以上、時間尿量測定が削られる一方で、抗癌剤の内服と麻薬の内服、外用が追加されました。今回削除された項目は比較的高頻度でカウントされていたものなので、従来と同様の患者構成では「重症患者比率」は必然的に低下することになります。より重症の患者さんを診るか、改善した患者さんを早く退院または転院させるという方策が必要となります。平均在院日数との兼ね合いで考えると、より早期の退院、転院を目指すことが王道と言えそうです。
この対策が取れないところは、ある一定の猶予期間の後にはこの7:1からの退場(つまりは急性期病院からの退場)を宣告されたというふうにも考えられます。過去の幻影にとらわれていると大艦巨砲主義時代の大型戦艦が太平洋戦争で航空機によって無力化してしまった時と同じようになってしまうかもしれません。

リハビリテーション関連で言うと、今回急性期病棟へのリハスタッフの専従配置による加算が設けられたことは特筆すべきことだと感じました。中医協論議の中で当初はこのリハスタッフの専従配置も7:1の要件に追加するという話もありましたが、今回は見送られた形です。また、アウトカム評価がこの加算には組み込まれたことも注目すべきポイントです。

ADL 維持向上等体制加算 ○点(1日につき、14 日を限度)
一般病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(一般病棟)または専 門病院入院基本料の 7対 1 病棟、10 対1病棟について、理学療法士作業療法士又は言語聴覚士を配置した場合の加算を新設する。また算定 にあたって、ADL に関するアウトカム評価を要件とする。

[施設基準]
1 当該病棟に専従の理学療法士作業療法士又は言語聴覚士を○名以上の常勤配置を行うこと
2 当該保険医療機関において、リハビリテーション医療に関する○年以上の臨床経験及びリハビリテーション医療に係る研修を修了した常勤医師が○名以上勤務していること
3 当該病棟の直近1年間の新規入院患者のうち、65歳以上の患者が○割以上、又は循環器系の疾患、新生物、消化器系、運動器系または呼吸器系の疾患の患者が ○割以上であること
4 アウトカム評価として、以下のいずれも満たすこと。

  ア) 直近 1年間において、当該病棟を退院した患者のうち、入院時よりも 退院時に ADL の低下した者の割合が ○%未満であること。
  イ) 当該病棟の入院患者のうち、院内で発生した褥瘡を保有している入院 患者の割合が○%未満であること。

この専従配置の病棟に入院した患者さん全員に(リハビリ実施の有無にかかわらず)この加算が算定できるということだと解釈しました(ただし入院後14日以内)。しかし気をつけるべきポイントは、
※ 当該加算を算定している患者について、疾患別リハビリテーション等を算 定できない。という一文。疾患別リハを算定できないということは、この病棟でのリハビリ実施が包括されたということです。民主党政権時の医療関連の公約の中に「リハビリテーションの包括」という文言があったと記憶していますが、この亡霊がこんなところに潜んでいました。リハビリテーションの全てが入院料の中に包括される時代への第一歩とならないかについて危惧しています。