病院間連携を考える

日経メディカルの記事。「在宅復帰できる患者だけ送って」って言われても」
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201307/531405.htmlより。
この記事は姉妹誌「日経ヘルスケア」の座談会形式の記事をベースにしたもの(というか日経ヘルスケアの広告?)定期購読しているので、この元記事も先月読んでおります。
この記事の題名にもなっている「在宅復帰できる患者だけ送って」という言葉はある意味極端な例だと思いますが、この記事で象徴されるのは、病院間連携における相互理解の欠除です。
「医療必要度が低い患者さんの受け入れ先がなかなか見つからない」「受け入れ先からは、『在宅に帰れる患者さんだけ送って』とリクエストされることが多い」「『末梢点滴だけで最期を迎えたい』と望む患者の受け入れを打診すると、『死にに来るための患者は受け入れられない。中心静脈栄養か胃ろうを造設してから送ってください』と返事が来る」は、急性期の紹介側の意見。
「転院先で提供される医療に関して十分な説明をしてくれていないので、受け入れた患者さんが気落ちして治療が難しくなる例がある」「『あの病院に移れば治してもらえるから』などと言って無責任に送り出してくる」というのは受け入れ先の病院から。
 急性期病院の連携室には平均在院日数短縮についての強烈なプレッシャーがかかっているのは事実ですが、これらの返事を受け入れ側が何故言うのか、という理由をしっかり考えなければなりません。受け入れをする回復期、維持期の病院・施設の大半は民間病院であり、そこで医療を継続するためにはきちんと収益を上げ続けなければなりません。そのためには毎年のように変わっていく医療制度、診療報酬制度への対応が必須です。それぞれが自分たちのフィールドでの生き残りをかける中では、「医療依存度の低い」患者さんが行くべき先は病院ではないし、在宅復帰率が診療報酬と直結している状況では、施設にしか行きようのない患者さんばかりを紹介されると困るのは間違いないでしょう。実際どう考えても回復期リハビリテーション病棟の対象外の患者さんを紹介してくるMSWなんていうのも実際に存在します。そういえば回復期なのに、何年も前の脳梗塞患者さんとか、転院直前に心不全増悪してSpO2が80%なのにそのまま未治療で転院してきた患者さんなんていうのも昔はあったなあ・・・(当然、一言もそんなことは紹介状にはなく、気分は救急外来。酸素10L流して、ルート確保してバルーン入れて、ベッドごとXp撮影しに行って・・・)。この記事にもある「末梢点滴だけで・・・」という患者さんの紹介打診も「死ぬための転院」なんてものをいやしくも「病院」が受け入れるべきなのか・・・なんてことも思います。
 一方で、受け入れ側も急性期の状況を斟酌せずに自分たちの都合ばかりを優先して受け入れ患者の選別を行なっている事例があるのも事実。在宅復帰率が高い理由は入院時に必ず自宅に連れて帰ることを約束した患者さんしか入院させないから、というのでは、「本当に回復期なの?」とか思ってしまったり・・・。
 かつて一つの病院で完結して行われていた医療が複数の医療機関・施設の機能分担によって実施されるようになって久しいのですが、一般の人の認識はまだまだその流れに追いついていません。それどころか医療現場で働いている人間も(特に医者が・・・)新しい医療制度を理解していなかったりします。かつて常識であったことが、今では通用しないことはよくあることですが、これは病院間連携についても言えます。その一番新しい情報に追いつきながら、自分の病院の経営を守りつつ、地域医療を維持し続けるための連携を模索していく必要がありそうです。