看護必要度A項目

現在、回復期リハビリテーション病棟入院中の患者さんの重症度を測定するツールとして使用されている「日常生活機能評価」というものは、もともとはHCU用に作成された「看護必要度」項目のうちのB項目と言われるもの。この評価表、リハビリテーション分野では大変評判が悪く、患者さんの「日常生活機能」を評価するには不十分であるという定評があったりします。
この悪評の原因としては、項目の不備と評価方法の不備の二つの側面があります。


項目の不備としては、回復期リハビリテーション病棟の使命である在宅復帰を目指す上で欠かすことのできない、基本的な日常生活動作能力項目の欠除があげられます。特に排泄に関する評価項目が一切ないことは致命的ともいえるもの。患者さん家族が自宅で介護可能か否かの判断で一番重視する項目とも言えるのが「一人でトイレに行って、始末ができるかどうか」。排泄のたびに誰かが介助する必要のある場合の介護負担を考えると当然と言えます。この他入浴についても評価項目がありません。
もともとHCUという集中治療室に入院中の患者さんのに必要な看護の手間を定量化する目的で開発されたツールですから、排泄は多くの症例でバルーン留置でしょうし、入浴なんてまったくなくて清拭のみというベッドですから、これらの評価項目が削られるのは当然といえば当然かもしれません。

一方、評価方法の不備としては、「看護が実際に手をかけたか否か」で評価することになっていること。家族がつきっきりでいて食事介助を全て家族が行えば「介助なし」という評価になることになっていますし、一日中、ベッド上臥床で他に行かなかった場合には、「移乗の介助なし」「移動の介助なし」と評価されます。これは「看護の必要度」を測定するツールとしては当然かもしれませんが、「患者さんの日常生活機能」を評価するツールとしては「致命的な欠陥」です。病院で看護師がせずに、患者家族がしている場合には「介助なし」の人が自宅に帰ったら、家族でない他の誰かがどこかから湧いてきて「介護の世話」をしてくれるわけもありませんし、当然患者さんの日常生活動作能力が改善しているわけでもありません。これを患者さんの能力改善の評価に使うということのバカバカしさがこのあたりからにじみ出てきています。

さらに今回の診療報酬改定では、「医療依存度の高い」症例を多く入院させている病院を評価しようという流れが、回復期リハにも押し寄せてきているのですが、その「医療依存度の高さ」を測定する項目として今度は看護必要度A項目を利用しようという話が出ているとか、いないとか・・・・。(http://www.fcfreha.net/pdf/kaihukuriha3.pdf参照)
この項目を眺めていると、「心肺蘇生の有無」(心肺蘇生が必要な患者が「回復期リハ?」、「同時に3本以上の輸液ルート」(どうやって転院してくるの?0、「動脈ライン」(そんなもの入れて在宅復帰の練習?)、「CHDFやPCPSなどの特殊な治療」(体外循環回している状態で何をしろとおっしゃるの?)といったリハビリテーション病棟とは全く無縁の項目がいくつも並んでいたりします。
回復期でも関係がありそうなのは、「創傷処置(褥瘡とか)」、「呼吸ケア(気管切開で吸引頻回など)」、「血圧測定5回以上(起立性低血圧の意識消失発作患者さんで)」、「人工呼吸器(夜間のみ使用するNIPPVが含まれるので)」。この春から、このA項目を測定していますが、これらの項目以外が「あり」となった症例は一例もありませんでした。

なんか鉛筆削りに斧を使うような感じの評価項目にです・・・