「総診」に対する「不信」

「専門医の在り方に関する検討会」という専門医認定の見直しを検討する厚労省の検討会で、「臓器・疾患を問わず幅広く患者に対応できる「総合医」」というものを一つの専門医分野として確立しようということが取り上げられた、というニュースがありました。
医療が専門化、高度化する中で、一人の患者さんとしてでなく、臓器別に診療するようになったので医師不足が起こり、医療費が高騰したからなんとか「少ない人数」で「安く」仕上げたいということが、彼らの思惑なんでしょうが、この総診というヤツにはあまりいい思い出がありません。(まあ、よかったことはすぐに忘れるけど、腹の立ったことは簡単には忘れないというバイアスがかかっていることは決して否定しませんが・・・)
この「検討会」で総合医を作ることを強力に主張しておられるのが、聖路加の福井先生。各種の著書でも総合医の重要性を説かれていて、その内容を決して否定しようとは思いませんが、僕が大学院にいる頃、京都大学病院に総合診療部ができました。大学院生とは言え、毎週外来をしていましたので、この総合診療部ができれば、「きっとしっかりとゲートキーパーとして機能してくれるに違いない!!」なんていうことを思いましたが、残念ながらその効果を感じることはまったくありませんでした。
まあ当然といえば当然で、当時から「原則紹介状を持って受診」するのが建前の大学病院ですから、そのゲートキープに当たることは紹介してくる「かかりつけ医」が担っているわけで、大学にやってくるのは「専門医」の診断、治療を必要としてやってきているのです。いわゆる一般の病気で大学病院に駆け込んでくるというスタイルではないのですから、この大学に「総診」を作るメリットはあまり大きくなかったのでしょう。(あれから15年以上経過して、未だに大学であんな外来が残っているのかと心配になりチェックしてみるとやっぱりというか無くなっていました)
さらに何かの間違いで?、ここの紛れ込んでしまった患者さん(僕の専門分野)が、総合診療部入院となり、いろいろしているうちに重症化してしまい、手に負えなくなってどうしようもなくなってから、こちらに丸投げという悲しい目にも遭いましたし(向こうは有給。こちらは授業料払いながらの大学院生・・・)。そのせいでどうしても「総診」という言葉には「不信」感がついてまわるのでした・・・。
さらに言えば、リハビリテーション科医なんていうものは、「臓器・疾患を問わず」患者全体に対応するだけでなく、住環境から嫁姑問題にまで幅広く対応することが求められていますが、この「総合医」さんはその辺りもお願いできるんでしょうか?