結核はけっして過去の病気でもないし、全て完治可能な病気でもないのだが・・・

 芸人さんが結核になったということで、話題になりました。(痩せた女の芸人さん)かなり売れているそうで、おそらくまともな休養もとらずに十分な食事摂取もできていないという中で免疫力が低下して発症に至ったという面もあるでしょう。
 結核はけっして過去の病気ではありません。原因のはっきりしない長期にわたって続く発熱を認める患者さんでは常に鑑別診断の上位に上げる必要のある疾患です。HIV患者さんや抗ガン剤治療中の患者さん、僕の本職である自己免疫疾患患者さんなど免疫系の抑制がかかっている状態ではこの結核が大きな問題となります。HIV患者の死因第1位が結核だったりしますし、院生の頃には、膠原病と難治性の間質性肺炎という診断を某大学病院で受け紹介されてきた患者さんの肺を生検してもらったら、間質性陰影に見えていたのが実は結核だった(免疫抑制が強くかかっていて、典型的な画像が得られなかった)という恐ろしい体験もしたことがあります。
 この結核の検査としてもっともポピュラーなのはツベルクリン反応。結核の菌体成分の抗原を皮内注射して2日後にその反応を測定します。この抗原に対して反応するT細胞による遅延型アレルギー反応をみる検査法です。
 日本ではBCG接種が多く行われていることもあり、ツ反陽性というのは普通だったりします。これが強陽性に変化していたりすると、最近結核菌の抗原に暴露された可能性が高い、と判断できたりしますが、もともとどれくらいの反応だったかを前もって分かっている人なんて極々少数しかいません。こういった場合に有効な検査としてクォンティフェロンという検査があります。
 ただこの検査も、血液中のTリンパ球が結核の抗原に対して産生するインターフェロンーγをELISAで測定するという系のようですから、強い免疫抑制のかかっている場合にはなかなか判定困難な症例もあり得るんだろうなあ・・・なんていう事を考えていました。結局は万能の検査なんてものは存在しなくて、全身をきちっと把握して、細かい患者さんの変化や症状、訴えにもしっかり気がつけるという医者の力にかかっていたりします。(そのための十分な診察時間とそれを保証する診療報酬がどうしても必要なんですよ。)
 リウマチの治療法は大きく進歩してきていますが、昨年から使用可能になったアクテムラなんて、IL-6をブロックするので仮に肺炎を起こしてもCRPも陰性だし、熱も出ないし、(生体のそう言った感染症時のいろんな症状も全てブロックされる)こういう患者さんをしっかりするのは大変です。(今の僕にはムリだな・・・)