実は根深い?!時間外労働問題

 巷では愛育病院の労働環境問題が話題になっています。15人という数の産科医を抱えている病院ですが、実質当直戦力は5人しかいなかったという悲しいお話まで見えてきました。
 この5人の先生方の当直過多状態(本当は時間外が異常に多い状態)を解決するために非常勤医の回数を増やす、非常勤医のみの当直の日ができる、それでもOK。みたいない話です。別に非常勤医でも優秀なDrはたくさんおられるでしょうから、非常勤医のみとは言っても医療レベルがどうこうという問題は無いと信じています。
 常勤医の時間外過剰状態を解決する手段として非常勤医の日数を増やすという話、労基署も東京都も厚労省もこれでOK、みたいな感じで話が進んでいきそうです。しかしこの非常勤医のDrたちの時間外労働をだれも管理していないのではないかと・・・
  この非常勤医として来られるDrの多くは大学病院のDrではないでしょうか。しかし、この大学病院の医師もドンドン足りなくなっています。それが各地の病院の医師の引き上げにつながっています。潤沢に非常勤医を派遣する余裕があるなら常勤医を各病院に配置しているはずです。各大学医局はおそらくたくさんの病院に当直医を派遣しているでしょう。そして一人のDrが複数の病院に非常勤医として出かけているのは確実です。(実際10数年前、大学院生のころ、僕自身も3カ所の病院に当直にでかけ、月に9日から10日は当直していました。若かったなあ・・・)
この大学病院のDrのTotalの勤務状況は大丈夫でしょうか?こういったDrの労働環境への配慮は全然する気がないのかな・・・と思ってしまいました。非常勤医という非正規労働者によってなんとかしているといういびつな状況。そしてそういった人たちの労働環境への配慮は全くないというのも昨年暮れからずっと問題にされていることなのですが。
 医療をめぐる環境は15年前もかなり危ない状況の中で回っていました。いろんなひずみはすでに出始めていましたが、ゴマカシコマカシ回していました。その時に、医師削減、医療費削減、医師を巡る不当な逮捕などにより、このなんとか回していた歯車の一つがぽろっと外れてしまったためにあらゆるところがきしみ始めています。1カ所を直そうとして新臨床研修制度をつくったせいで、中堅の勤務医や地域の公立病院にムリがかかり、医師の逃散や公立病院の廃院につながってきました。(けっして新臨床研修制度でダメになったわけではなく、すでにダメになりかかていたところに最後のトドメをさされたというのが真実だと思いますが)今、労基署が医師の時間外労働についてメスを入れました。このことは間違いなく正しいことですが、それによってどこかに必ずムリがかかります。そのかかってしまうムリを誰がかぶるのか。僕が医者になる直前から始まった「医療費亡国論」による「医師削減」が残した医師の少子化問題(今の少子高齢化は、これから子供の数を増やそうとしてもそもそも子供を産むはずのお母さんの数が減ってしまっていることが根本原因なのと同じ)は今から突然増やす水増し研修医によって解決するとはとうてい思えない、なかなか奥の深い問題だと思います。