何故、日本の救急医療は改善しないのか。

 救急医療といった時、頭に思い浮かぶのはどのような病気でしょうか。交通事故、心筋梗塞脳卒中、最近話題の産科救急・・・では、実際にどれだけの救急患者がいるのか、その疾患は何か、その重症度は、患者さんの年齢層は、どこから運ばれたのか・・・実は、日本国内でこれらの情報をきちんと持っている所はほとんどありません。現在長崎リハビリ病院http://www.zeshinkai.or.jp/院長の栗原先生の講演でこの話をよく聞きますが、この統計をきちんと取っているのは長崎のみだそうです。
 例えば、「救急搬送患者の重症、中等症、軽症で軽症の割合が・・・」とかいうニュースがあります。この軽症、重症はどうやって判定しているでしょうか。実は救急車がやって来たときに必ず救急外来の医師が受けたというサインをします。この用紙には「重症」「中等症」「軽症」の3つに「○」をするようになっています。ちなみにこの紙は受けてすぐにサインしないといけません。つまりまともに診察をする前にさっさと書く必要があるわけです。
 さらに「重症」の定義は3週間以上の入院が必要かどうか、だったりします。「軽症」は入院が不要な場合。ちなみにアメリカでは心筋梗塞の患者さんの平均入院期間は4日程度ですから、アメリカ的に言えば心筋梗塞も「中等症」ということになります。もともとかかりつけで見ていて、どんな状態か知っている患者ならともかく初めてみた患者がどれくらいで退院可能か、退院先は自宅なのか、施設なのか、それとも療養型なのか、そんなことが救急車を受けて数分でわかるヤツなんているはずもなく、こういう不確かなもので取られている統計などどうやったってそのあと必要な医療資源の量の推計に役に立つハズもなかったりします。
 そして、その救急搬送された患者さんの疾患分類、それまでどこにいたのか、(自宅なのか、施設なのか、療養型病院なのか)、これで何度目の搬送なのか、これらの情報もなにも持たずに必要な医療のカタチを論議できるとはとうてい思えなかったりします。