自殺報道をめぐるニュース

「自殺報道、総務省が民放テレビに質問メール」というニュースが読売新聞に。「日本の報道陣もWHOの自殺報道に関するガイドラインを守るべき」とかそういう論調のニュースかと思ったら・・・「「報道への介入だ」との批判も出ている。」というのがメインのニュースでした。
 練炭自殺のニュースをしつこく何度も流したり、最近では硫化水素自殺、子供の「いじめ自殺」など、その全てがWHOの自殺に関する報道についての手引きをことごとく無視したものになっているのでは、と危惧します。
報道へ介入したくなる気分が理解できるようなことばかりしておいて、自分たちに都合の悪いときだけ「報道への介入だ」などと騒ぐのは・・・

以下、ガイドラインを和訳した資料からの引用。
一般原則
1.慎重かつ正確に統計を解釈する。
2.信頼できる情報源を利用する。
3.時間が迫っているからといって、十分に用意されていないコメントを安易に用いない。
4.件数の少ない事例を過度に一般化することに対して特に慎重にする。たとえば、「自殺の疫病」「世界でもっとも 高い自殺率を呈する地域」などといっ た表現は使うべきではない。
5.社会・文化的な変化に対する理解できる反応として自殺行動を報道するのを控える。
特別な自殺をどう報道するかについて
1.特に有名人が自殺した場合には、自殺 を過度にセンセーショナルに報道す べきではない。最小限度の報道にとど める。その人が罹患していた可能性の ある精神的な問題についても取り上 げる。詳しすぎる報道はできる限り控 えるように努力する。自殺者、方法、 現場の写真は提示すべきではない。自 殺の見出しを一面に載せることは自 殺報道では望ましいことではない。
2.自殺手段やその入手方法を詳しく報 道するのは避ける。メディアによって 報道された自殺方法が、それに引き続 く自殺でもしばしば模倣されること を明らかにしている研究がある。特定 の場所(ある特定の橋、崖、ビル、鉄 道)がしばしば自殺の場所として広く 知られていて、それが報道されること によって、さらに多くの人々がその場 所で自殺する危険がある。
3.自殺を説明ができないこととして報 道したり、あるいはあまりにも単純化して報道すべきではない。自殺はけっして単一の原因や出来事だけで生じるわけではない。しばしば多くの要因 が複雑に関連して自殺が生じている。 たとえば、精神障害、身体疾患、薬物乱用、家庭的な問題、対人的な葛藤、人生の問題などが複雑に関係している。さまざまな原因が自殺に関連していたことを認識するほうが有用であ る。
4.破産、試験の不合格、性的虐待といった個人的な問題を解決する方法として自殺を報道すべきではない。
5.偏見や心理的な悩みといった問題について配慮し、遺族や他の遺された人々に及ぼす影響を考慮して報道すべきである。
6.自殺者を殉教者のように美化したりすると、潜在的に自殺の危険の高い人に対して、社会が自殺を名誉あるものとみなしているとのメッセージを送ってしまいかねない。むしろ、自殺した人を悼むことを強調すべきである。
7.自殺未遂のために身体的に障害が残った点(脳障害、麻痺など)を報道することは、自殺の抑止となる可能性がある。

入手可能な援助源について情報を与える
1.自殺報道に際して以下のような情報を伝えることによって、メディアは自殺予防の重要な役割を果たすことができる。
2.最新の電話番号や住所を載せて、利用可能な精神保健機関や電話相談機関の一覧を掲載する。
3.自殺行動の警戒兆候について報道する。
4.うつ病がしばしば自殺行動に関連しているのだが、うつ病は治療ができる状態であることを報道する。
5.遺族に対して心からの追悼の念を伝えるとともに、遺族を支えるグループの電話番号なども報道する。このようにすることで、精神保健の専門家、友人、家族からの介入の可能性が高まる。