あえて今主張する。研修医、後期研修医の僻地勤務義務化は亡国論だ!!

 このところ、恐ろしいほどの勢いで各地の病院の休診、救急病院取り下げなどのニュースが続きます。こういった中で、地方の県知事さんなどが、研修医や後期研修医の僻地勤務義務化を声高に叫んでいます。研修医を僻地に送り込むことのメリット、デメリットを考えた上でこういった主張をしているのでしょうか?いわゆる僻地で、医療資源も乏しい中で、曲がりなりにも医療を行っていくために必要なモノの一つは「経験」ではないかと考えています。「前にこんな症状の人を診た」とか「こんな感じのときはヤバイ」というけっして科学的ではない「勘」みたいなものが医療の現場では必要です。かつてと違い、どんな時でも最高最良の医療を求める昨今の風潮の中、臨床経験の無い「研修医」やこのところの臨床研修義務化の中で「ポリクリ(臨床実習)の親分」みたいな身につかないローテートをしただけの「後期研修医」(3年目とか4年目とかの医師)を十分な研修体制の無い僻地に送り込もうという発想がおかしいのです。そして見落としがあったら即訴訟です・・・。研修医を育てるのは無茶苦茶パワーが要ります。夜中に救急外来で、一人で同じ時間を診ていたら10人診られるとしたら、研修医を指導しながらならその半分です。それでもお役人達は2倍の医師配置なので20人診られると思うのでしょう。大学病院のある地域の医師数は日本の平均を大きく上回りますが、そこには「教えられる側=余計に手のかかる研修医」とか「臨床なんかしていない研究一筋のヤツ(僕の同級生にはかなりいます。)」とか「研究、臨床の二足のわらじ状態(かつての僕はそうでした)」とかみたいな1人として数えられるだけの戦力になっていない人間が山ほどいるという現実がわかっていない(あるいはワザと無視されている?)数字の上での遊びみたいなものになっています。
 そしてなにより、この研修医達こそが10年先、15年先の日本の医療の中核を担うべき人材なわけです。これを今、無茶なことをしてきちんとした専門家を養成していかないと悲惨な未来が待っているということを認識しなければなりません。