救急医の地位が低いというわけではないのでは?

 朝日の特集記事から、http://www.asahi.com/kansai/news/kyuukyuu/OSK200802130015.html
 そこに出てくる他の科のDrに取材をしていますか?新聞記事でいつも不安になるのはこの事です。「双方の主張を良く聞いて判断しましょう」というのは、小学校の時のケンカの仲裁でも言われること。「○○君がなぐった」みたいな片方だけの主張で叱るのではなく、その背景にあるものまで良く話を聞きましょう、とか習いませんでしたか?と言いたくなります。まず最初の例、1ヶ月先まで人工関節や脊椎の手術が埋まっている病院ということは、おそらく整形外科に割り当てられた手術室枠はすべて使ってしまっているのでしょう。その状態で緊急で外傷の手術をしろとおっしゃるのでしょうか?その先生が「患者本位」というのと同じようにその整形外科のDrも患者さんがすぐ治療を受けることの可能な病院を探してあなたの代わりに紹介しているのかもしれませんが、いかがでしょう?よく病院の満床をレストランの予約にたとえる方がいます。救急医がどんどん呼び込みをしても入るスペースは限られています。限られたスペースをどう有効利用するかしかないのです。「救急をやります!!」と言っても後ろで支えてくれる人々がいるおかげでできているという気持ちがないと周りから総スカンをくらうのは火を見るより明らかでしょう。次の病院での呼吸器内科のDrたちのことを責めておられますが、半年間その救急医を後ろで支え続けたわけです。高齢者の肺炎患者を呼吸器内科にふりつづけると、冬場は一人で何十人も診ないといけないという悲惨な状況になります。なんでも文句を言わずに取ってくれる病院は救急隊にとっては神様みたいなものですし、救急のおかげで売り上げが上がったように見えたら院長もよろこぶでしょうが、その陰には必ず泣きを見るひとがいます。これらの患者さんの入院後の治療も病状説明も退院先の確保もすべてひとりで行っている呼吸器内科の気持ちもかんがえないといけません。そしてスケジュールの決まっているガンの化学療法の患者の治療も断って「肺炎を治療しろ!!」といわれたら、今度はガン患者の行き場がなくなります。入院経路は救急外来からだけではありません。
圧倒的に不足する医療のリソースをなんとか危ういバランスを保ちながら利用しているという状況把握がないなかで、なんでも救急は断らずにとる!!という救急医がいれば、その病院の他のDrにとってその医師は夜中にバンバン軽症をつれてくるモンスターペイシェントとかわらなくなってしまいます。そしてそういったDrの気持ちをくんでいない記事はさらに一生懸命な医師の気持ちを壊していくかもしれないのです。