今年をあらわす漢字一文字 in 医療界「崩」

 今年はまさに医療崩壊が表面化した年となりました。年末、最後の最後も「病院の半数「救急の看板倒れ」 30病院の受け入れ拒否」でした。この記事が昨年までと変わったな、と感じるのは「医師不足」という言葉がキーワードとして入るようになったことでしょうか。
「救急病院」という言葉で一般の人が想像するのは「救命救急センター」とかNHK「ER」で描かれている「ベントン先生」みたいなものかもしれませんが、現実にはまったく違います。僕が大学院生時代に「ネーベン」で当直していた病院はどこも「救急指定病院」でした。京都、大阪のいくつかの病院で仕事をしましたが、全て当直は僕一人、外来には看護師もいなくて患者が来ると病棟の夜勤の看護師がおりてくる、という体制でした。そのころの僕は怖いもの知らずで、なんでもどうぞという気持ちでいたので、DOA(Dead on Arrival)も山のようなインフルエンザも子供の腹痛もなんでも診ていました。しかし、「すぐに訴訟を起こす」、「真夜中でも専門医を呼べと騒ぐ」という時代が来てしまい、そんな医療は不可能となってきています。今回の搬送を断った病院の中には「2病院が「重症患者に対応できない」と回答。同市の民間病院は「うちは療養型病院で、軽症の外傷患者しか救急対応していない」と明かす。」というような急性期患者を診ることのできない病院が含まれています。でもこういった病院が軽症の外傷患者を受けて下さるからこそ救命救急センターで本来の救急患者を診ることができるのです。
 微妙なバランスの中でぎりぎり成り立っていた「医療」をみんなで「崩壊」させたというこの一年でした。