近頃の若い医者は本当に都会志向なのか?

 臨床研修義務化から3年が経とうとしています。曰く、医師の都会偏在、曰く、きつい診療科を敬遠する若者の増加、などが言われています。今日の医師不足の最大の原因の一つとして強調されています。確かにこの研修義務化による大学の医師引き上げは強烈でした。しかし、本当に研修義務化だけが問題であったなら今年は2年間のおつとめの終わった、あらゆる診療科で基礎を身につけた?筈の医者が各方面に広がって、医師不足は解消されないといけなかった筈なのですが、むしろ各地でさらなる雪崩現象を起こしたような医師不足です。
 うちの病院で初期研修を行った若い子たちと話をして思うのは、彼らは決して都会志向なのではなく、さらなるスキルアップを図りたいという健全な気持ちを持っているということ。決して給料がいいから、とかそういったものではなく、自分のやりたいことを出来ることが重要なのです。これは、僕が若かった頃となんら変わっていないと思うのです。では、何故医者が足りなくなったのか、と言えば、
1.中堅クラスのドロップアウト
2.いわゆる純粋な医療行為以外の負担の増加で医師の生産性が低下している
ということではないでしょうか?本来中心的に働くべき世代が病院から消えていくからこそ、人員不足となっているのです。決して研修医がいないから人員不足となっていないのです。(研修医が多いと指導とか案外しんどくて、一人で仕事した方がずっと速かったりします)逆に言えば、これらの研修医を戦力としてあてにするようなレベルの医療を行っている病院が研修医たちからそっぽを向かれたということです。実際、最良の医療を行わなければ(それも結果論で)損害賠償だ、逮捕だ、裁判だと言われては、いったいどうやってモチベーションを維持して医者を続けられるのでしょうか。指導医(という名前の上級医)も自分の仕事をこなすだけで精一杯で疲労困憊している状態なのです。自分たちを守ってくれる。今後の医師としての自分のキャリアアップ、テクニック向上に役立つということが研修先として必須項目なのです。
 先日、理学療法士の面接試験をしたときに愕然としたことの一つに島根県内のあるリハビリテーション専門学校の卒業生の内、島根県内の医療機関に就職を希望しているのは2人だけということがあります。この学校の維持に島根県がどれだけの補助金を費やしているのか、知るよしもありませんが、全く改善の兆しの見えない島根のリハビリテーション体制の現実を改めて確認しました。