7:1看護は誰のため?

昨年春の診療報酬改定、最初に騒ぎになったのはわがリハビリ分野でした。慢性期リハビリ打ち切り!!という大騒ぎがありましたが、運用次第で多くの脳血管疾患患者の長期リハビリは可能となる、と厚生労働省の方や某リハビリ病院のI先生はおっしゃっておられましたが、現実にはきちんとリハビリ科医師が診察していない=算定除外患者の判断ができない多くの病院では180日で打ち切られているようです。しかし、その騒ぎもどこかに消えてしまい、今の話題は看護師不足。曰く、都会の病院が看護師を集めたせいで看護師が足りなくなったとか、急性期でない病院まで7:1の看護基準を満たそうとするのが問題とか・・・基本的に厚生労働省は経済的な締め付けと誘導(いわゆるアメと鞭)で世の中の病院を誘導しています。今、問題となっている地方での医師不足、経営の行き詰まりも、決して昨日今日始まったものではなく、長年のツケが政府の締め付け(地方交付金の削減とか)のためにごまかせなくなっただけなのです。我が島根も同じ事。第2、第3の夕張が出てきてもおかしくない(青森に先は越されそうですが)ということを誰も考えているようにはみえないことが一番恐ろしいともいえます。
 さて、7:1看護ですが、古い言い方ではこの7:1看護は1.4:1看護にあたり、これまでの基準であった2:1にくらべ充実した看護体制になり、充実した看護体制になると主張したわけです。しかし、看護師の総数を増やす方策がなされていないわけですから、どこかを密にすればどこかが疎となることは火を見るよりも明らかなわけで、ただでさえ崩壊しかけていた場所では、さらにその崩壊が進む(若くてやる気がある医者、看護師はシステムの崩壊した、医療レベルの低いところで仕事をしたいとは思わないでしょう)という状況になっていくのでしょう。
 そしてその解決策として急性期の一部の病院以外ではこの看護基準による加算を認めないことにするといった案が話し合われているという報道にあきれかえってしまいました。決して急性期のみに看護人員が必要なわけではないのです。うちの病院の全ての病棟での看護時間の検討による比較で、もっともケア度の高い病棟は回復期リハビリテーション病棟なのです。全国でも、もっとも積極的に仕事をしているSリハビリテーション病院では、48床にたいし、看護師・介護士などの看護職が34名、PT, OT, STの療法士が計30名配置されているのです。これが回復期に必要な人員なのです。この数が必要な人員と考えられたからこそ、この人員になったのでしょう。
 これに対して、今回7:1看護をとった多くの病院はお金の面から増員された人員配置なのではないでしょうか。7:1の人員配置をすれば、こんな看護が実践できる、あるいは自分たちの理想とする看護を実現するにはこれだけの看護師が必要だという主張が果たしてあったでしょうか?
 せめて、7:1を実現したからには、去年までとは違う充実した「看護」を目指して欲しい今日この頃です。