奈良の産婦人科の話

 いろいろな情報がネットを飛び交っています。ずっと医療バッシングを続けている毎日新聞や視聴率さえよければOKみたいなTV番組であまりにも思慮のない発言をした女医さんとかが徹底的にたたかれています。この数年続いてきた医療不信をあおるような風潮にたいして、とうとう医者の側もキレたのかな、という印象です。
 最初にこの事件を聞いて思ったことは、よく赤ちゃんを助けられたな、ということでした。このお母さんが命をかけて産んだこの子供を家族みんなの愛情で育てて欲しいです。
 自分だったら、CTを撮影したと思いますが、それは今勤めている病院だったら、という話でしかありません。うちの病院ならたとえ夜中でも30分以内にCTでもMRIでも撮影してもらえるし、脳外科の医者だろうが心臓外科の医者だろうがコールすれば30分以内に当番医が来てくれるからです。放射線科医も夜中に読影が必要なときには写真をみにきてもらえます。7年前に田舎に戻ってくる前に勤めていた大阪のど真ん中の病院(規模は今と同じ700床以上の大病院)なら脳外科も心臓外科も深夜にはけっして来てもらえませんでしたから、ある意味、大阪よりも救急のレベルは上かもしれません。しかし、重症の救急車が3台重なってきて、医者も看護師も走り回っていても、それを理解して頂けないことはよくあります。夜中でもちゃんと専門医が診察しないのはけしからん。と言われます。研修医に診察させるなんて、と投書を受けたこともあります。夜中に2,3日前から微熱が続く、開業医の小児科の先生に診てもらったけど。。。ってその先生の方が僕よりずっと腕は確かでしょう!!と言いたくなることもしょっちゅうです。
 奈良には周産期医療センターがなかったのが悪い!!と言われますが、今産科医療で問題になっているのはそんな「箱」ではなくて中身が入っていないこと、入れるものがないことです。立派な周産期センターなるものを何十億かけてつくっても、中で働く医者をどこから集めてこれるのでしょう。どんな重症でも必ず引き受けられるセンターにはどれだけの産科医と小児科医と麻酔科医、看護師が必要となるでしょう。いますでにまったく足りなくなっているにもかかわらず、そんな施設を作って人をかき集めたら、地方から医師はいなくなってしまう気がするのは僕だけでしょうか?